喫煙と飲酒の脳に対する影響
喫煙や飲酒は体に良くないというのはよく知られていることだと思いますが、ここでは脳に対する影響を見ていきたいと思います。
喫煙と脳
喫煙の体に対する影響というと、呼吸器疾患、動脈硬化、ガンなどがありますが、脳に対する影響も大きいものがあります。
喫煙の効果として、集中力が高まったり、ストレス解消になるという人がいます。
集中力が高まった気になるのは、ニコチンの作用です。
ニコチンが脳に入ると10秒ほどで脳に影響をあたえます。
アセチルコリンという神経伝達物質と結びついて、脳が覚醒して、集中力が増し、すっきりしたような感覚になります。
しかし、この効果は10分程度でなくなり、すっきり感はなくなってしまいます。
このことが依存性につながり、中にはニコチン中毒まで発展させてしまいます。
覚醒作用と、即効性がニコチンの特性ですが、この組み合わせで依存性が高くなるわけです。
ストレス解消になるというのは、ドーパミンが関係しています。
脳に入ったニコチンがアセチルコリンという神経伝達物質と結びつく時に、ドーパミンという伝達物質を出します。
ドーパミンについては聞いたことがある人も多いと思いますが、快楽物質とも呼ばれています。
このドーパミンが放出されることで、快感が得られて、気分転換、ストレス解消につながるというわけです。ただし、この効果もすぐにきれてしまうため、依存性につながってしまいます。
喫煙には確かに一時的な集中力の高まり、気分転換という効果はあるかもしれませんが、依存性が高くなるリスクとともに、脳に対する他の悪影響は見逃せません。
喫煙は一酸化炭素による血流の減少と酸素不足を招きます。
酸素不足は脳へ顕著な影響を与えます。
なぜから、脳は筋肉組織とは異なり、酸素を溜め込めないので、体の中で一番喫煙の影響を受けやすいのです。
実際、脳は体重の約2%にすぎませんが、それと比較すると必要酸素量は多く、体に取り込まれる酸素のうち約25%が脳で消費されると言われています。
「食生活と脳」のページで説明しましたが、エネルギー消費量の20%が脳で使われるのと似ていますね。
喫煙の影響については、いろいろなデータがあります。
短期の喫煙のデータとしては、
情報処理力のテスト(ブロッキングテスト)で、喫煙後喫煙前よりも情報処理能力が明らかに低下したとか、
長期間の喫煙のデータとしては、
愛知県の国立長寿医療研究センターの調査で、喫煙による知能の低下が明らかになっていますし、名古屋の名鉄病院が大手予備校の協力のもと調査した結果では、一浪の予備校生について、喫煙、禁煙、非喫煙での合格率で、喫煙者の圧倒的に合格率が低かったというデータもあります。
このように一時的に集中力が増したとか、ストレス発散できたと感じても、データを見る限り、情報処理能力は落ち、学習効率が落ち、知能は低下するという悪影響は明らかとなっています。
他にも喫煙によって脳の委縮を引き起こすことでアルツハイマー病のリスクが指摘されていますし、もちろん、動脈硬化など血管への悪影響から、脳卒中など脳血管性障害の恐れも高くなります。
こうして脳に対する悪影響を考えただけでも、喫煙という生活習慣は何とか断ち切りたいものですね。
(管理人は非喫煙者なので簡単に言ってますが、禁煙はかなりやっかいみたいですね。)
自分だけで禁煙に取り組むのは挫折が多いようですので、本気で取り組むなら病院の禁煙外来で専門家のアドバイスに従って取り組む方が結果的に近道になると思います。
飲酒と脳
飲酒についても喫煙同様脳に対する悪影響が指摘されています。
その影響とは脳の委縮です。
ある研究結果によると、一日2合以上の継続的な飲酒が脳委縮の危険因子となっていることが明らかになっています。
一日一合程度ならお酒を飲まない人と比べて、脳委縮率の有意な違いが出ないということから、過度な飲酒は避けるべきとの見方につながっていますが、最近の研究では、一日一合程度でも脳委縮の危険因子になるという研究結果もあるようです。
飲酒にはストレス発散、コミュニケーションの活発化、ワインの場合にはポリフェノールなどの効果が知られていますが、喫煙同様依存しやすい(アルコール依存症)ものですし、脳の萎縮だけでなく、食道ガンや大腸ガンといったガンの危険因子にもなることから、過度な飲酒の習慣がある人は見直すべきでしょう。
一昔前は「酒は百薬の長」なんて言われていましたが、現在は少量の飲酒でも体に良くないものという認識に変わりつつありますので、お酒との付き合い方も変えていく必要があります。
とは言え、禁煙同様お酒が好きな人にとっては禁酒は相当難しいと思います。
こういうこと書いておいて何ですが、酒好きな自分には禁酒ちょっと無理なので、休肝日を定期的に設けるようにしています。