記憶と感覚の関係

記憶と感覚の関係

五感とは視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚ですが、これらの感覚は様々な情報を記憶する際にとても重要な役割を果たしています。

多くの人が経験したことがあると思いますが、ある音楽を聴くとその音楽をよく聞いていた頃の情景を思い出すとか、あるいは昔の写真を眺めていたら、埋もれていた記憶がよみがえったとか、それらは感覚が記憶を呼び起こしたものです。

記憶と言うのは、何かフックがあると呼び起こしやすくなるのですが、五感はそのフックとして利用しやすいものです。

感覚は一つだけでなく、多く組み合わせれば組み合わせるほど、記憶するのに効果的です。

例えば、物を覚える時に、見て覚えるだけよりも、声に出す、そして図表して書く、匂いをつける、などの感覚をより多く使えば、それだけ効果的になります。

感知する感覚器官が増えれば増えるほど、それに比例して記憶力の向上につながる脳内の活動領域が広がるのです。

これは感覚記憶と呼ばれるものですが、五感の中でも特に、視覚と聴覚が記憶するのに大きな役割を果たしています。

また五感だけに限らず、情報に何か感覚を呼び起こすようなフックをつけることは記憶するテクニックとして有効になります。

記憶力と注意力の関係

五感は記憶において重要な役割を果たしていますが、五感の中でも視覚は一番活発に働いている感覚です。

起きて目を開けている時は、常に目からいろいろな情報が入ってきます。

しかし、漫然と見ているだけでは、ほとんどの情報は記憶として残りません。

以前どこかのテレビ番組で実験をしていましたが、実際に会って話をした人が、どんな服を着ていたかとか、ほとんどの人が、会って話した直後に聞いても答えられませんでした。

目には映っているけど、全く注意していないから、記憶に残っていないわけです。

ということで、視覚を働かせて、記憶にとどめようとするなら、意識的に「見る」ということをする必要があります。
つまり、よく注意して見るということですね。

また視覚だけでなく、聴覚も同じです。

漠然と聞いているだけでは、何も記憶に残りません。

人は自分の関心のある音には反応しますが、関心がなければ反応せず(聞き流して)、記憶として残らないのです。

例えば、近くを走っている大きな電車の音は気にならないのに、気になる小さな音の方に反応してしまうようなケースはよくあることです。

したがって、視覚と同じように、聞いたことを意識的に記憶にとどめておきたいなら、漠然として聞くのではなく、注意して聞くことが必要になります。

このように、注意力というのは、情報を記憶するための、フックを作る上でとても重要です。

関心がなく何ら脳に刺激を与えない情報でも、注意力を働かせることで、記憶にとどめておくことができるようになっていきます。

もし関心のある事象であれば、意識的に注意力を働かせなくても、興味や好奇心といったものが注意力と同じような働きをして、記憶に留まる率が高くなりますが、関心の低い事象を記憶しなければならないような状況では、意識的な注意力が必要になってきます。
(これを能動的注意と言ったりします。)

能動的注意力を高めるには、ある程度訓練が必要です。

普段の生活において、どのような注意力を働かせて、事象を記憶していくのか、実際にやってみることです。

その実践を積み重ねることによって、それらは自分自身の記憶のテクニックとして蓄積され、記憶力向上に必ず役に立ってくれるはずです。

記憶と感情の関係

五感には含まれませんが、人が抱く感情も記憶と大きな関わりがあります。

人には喜怒哀楽というように、喜び、悲しみ、怒りなどいろいろな感情があり、過去の記憶と関わりあっています。

感情は脳に対して大きな刺激を与えるものであるため、その感情に関連する事象の記憶というのは残りやすくなります。

このように、日常に起きる出来事を、全く意識しないで記憶しているかどうかについて感情が影響していることは明らかですが、意識的に何かを覚える、つまり学習(知識、技術の習得)などの場面でも感情は関わっています。

生活習慣のストレスでも説明しましたが、人はストレス状態(つまりネガティブな感情の状態)においては学習効率が悪くなることがわかっています。
ストレスはコルチゾールというストレスホルモンの分泌を促し、脳の機能を低下させます。
また嫌な感情については睡眠中に脳は記憶から消去するような働きをするので、そのような感情の下で学習したことも記憶に残りにくくなります。

逆にリラックス状態、気分のいい状態(ポジティブな感情の状態)での学習効率は高まります。

したがって、意識して何かを記憶しようとか、理解しようとか、脳を効率的に働かせたいなら、自分自身がリラックスしてポジティブな感情になれる環境を整えることが大事になります。

音楽もその一つですし、アロマのような香りも一つの手段になるかもしれません。
または瞑想によるセルフイメージの強化でもいいでしょう。

自分自身はどのような環境で感情がポジティブになれるのか、改めていろいろと考えてみてはいかがでしょうか。

記憶と音楽の関係

音楽が人に与える影響については、様々な研究がありますが、音楽と記憶に関する研究としては、ロンドン大学の精神分析医、Elizabeth Valentine(エリザベス・バレンタイン)の実験があります。

この実験では、認知症の高齢者を対象にして、室内環境を変えてテストを行いました。
一方は音楽なしの静かな病院、もう一方は音楽演奏が聞こえる病院で、この2つの環境で自分の経歴を覚えているかテストしたところ、音楽がかかっていた方がいい結果が出たのです。

音楽の種類については、別に特定のジャンルがいいとかはないようです。
実際に、イギリスの研究者が、軽い認知症の人23人に以下の状況下で4週間かけてテストを行いました。

  • 被験者が知っているおなじみの曲
  • 被験者のなじみのない奇抜な音楽
  • 録音しておいたカフェテリアの音
  • 音楽なし

この結果、音があった方がテストの成績がよかったのですが、音の種類については関係なく、なじみの曲であろうが、知らない曲であろうが、成績に関係ないという結果になりました。

これらの研究結果について、研究者は、音楽には、精神を落ち着かせ、脳を刺激し、活気づける力があり、集中力が高まることが関係しているとしています。

こうしたことから、認知症の治療としては、従来の薬物療法にプラスして音楽を取り入れることで、治療効果が高まるとも言われるようになっています。

自分の経験でも、音楽と学習や作業との相性の良さを実感しています。

静かな環境で勉強するよりも、音楽をかけて勉強したり、作業したりする方が効率が明らかに高まるのです。

これは、音楽が脳に何からの刺激を与え、学習、記憶面でいい影響を及ぼしているのではないかと考えています。

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